ナナフシの森

-シラキトビナナフシの窓-

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シラキトビナナフシの外部形態

(メスの外部形態)


一般体型

一般体型
  • シラキトビナナフシは、オスが発見されていません。メスの外部形態について記述していきます。
  • シラキトビナナフシの各部の画像については、「シラキトビナナフシの体」を参考にして下さい。

頭部

頭部背面
頭部背面
頭部側面
頭部側面
頭部下面
頭部下面
触覚
触覚
  • シラキトビナナフシの頭部は前の方に口がついています。
  • 複眼は、頭部のやや前方の側面についています。複眼の色は赤く、夜行性のため暗くても見えるようになっているようです。単眼については無いと思われます。
  • 触覚は、前肢より長く、約70の節があります。各節の前方部には、緑色の環部が見られます。各節の長さは一定ではありません。
  • 口器は、植物の葉を食べる食植性のために咀嚼型の口器になっています。大顎は大きく、葉を噛み切っていきます。小顎鬚は5節からできています。頭部下面の下脣は、前基節・基節・亜基節にわかれています。亜基節から下咽頭をへて前胸につながっています。

胸部

胸部背面
胸部構造
胸部背面
胸部
胸部色彩
胸部の紫紅色
胸部側面
胸部側面
胸部腹面
胸部腹面
  • シラキトビナナフシの胸部は、前胸・中胸・後胸の3つの部分からなっています。
  • 前胸は短く、ほぼ方形をしています。前胸背板には、横溝と縦溝があり、アルファベットの「E」にみえる黒い模様が見られます。
    前胸からは、1対の前肢が出ており、頭部と接続しています。
  • 中胸は、長く、後胸の2倍ほどあります。中胸背板には、正中隆起線があり幅広い紫紅色の縦帯が走っています。中胸背板の表面には、ぶつぶつとした小さな突起物があり、ざらざらとしています。
    中胸からは、1対の前翅と1対の中肢が出ています。
  • 後胸は、第1腹部と癒合しています。しかし、前胸・中胸・後胸の腹板は、黄緑色をしていて、第1腹部腹板の白色とは、区別をつけることができます。
    後胸背板からは、1対の後翅が出ています。また、後胸から1対の後肢が出ています。

翅部

翅全体
翅全体
翅の全体(翅展開)
翅の全体(翅展開)
前翅の翅脈
前翅の翅脈1
前翅の翅脈
前翅の翅脈2
後翅革質部前部の翅脈
後翅革質部前部の翅脈
後翅革質部後部の翅脈
後翅革質部後部の翅脈
後翅膜質部の翅脈
後翅膜質部の翅脈1
後翅膜質部の翅脈(拡大)
後翅膜質部の翅脈(拡大)
  • シラキトビナナフシは、前翅と後翅を持っています。後翅は、長く発達していますが、前翅は、小さな楕円形の片に退化していて、単に後翅の関節部を保護しているだけのようです。
  • 前翅は、革質化していて、その翅脈はかなり単純になっています。前翅のC脈は欠いていて、R脈はもっとも強い脈になっています。
  • 後翅は、膜質状の臀域以外の部分は堅く革質化していて、膜質状の臀域は淡いピンク色をしています。
  • 後翅の前縁はC脈で、Sc脈は前縁に平行して走っていて、先端は途中できれています。R脈やM脈は単純で、Sc脈からCu脈の間の狭い翅の前域に走っています。
  • 後翅の残りの部分は、幅広い膜質状の臀扇で、普段は後翅前域の革質化した部分の下に扇子状に折りたたまれて収められています。臀扇のA脈は、その基部の脈の出る位置から、1A~7A と 8A~14A の2つの群に分かれています。
  • 翅の機能としては、移動の手段というよりは、落下した時のパラシュート的な役割が大きいと思われます。

縦脈 longitudinal vein

記号:C  Coastal Vein
前縁脈(ぜんえんみゃく)  翅の前縁に沿って走る縦脈
記号:Sc  Sub Coastal Vein
亜前縁脈(あぜんえんみゃく)  前縁脈と平行している縦脈
記号:R  Radial Veins
径脈(けいみゃく)  翅の先端中央に達する縦脈、2主支脈~R1(第1径脈)・Rs(径分脈)
記号:M  Median Veins
中脈(ちゅうみゃく)  径脈の後方の縦脈
記号:Cu  Anterior Cubitus Veins
肘脈(ひじみゃく)  後縁に近い縦脈
記号:A  Anal Veins
臀脈(でんみゃく)  最後方の縦脈(膜質部の縦脈)

支脈

分岐の場合
翅の前縁に近い方から Sc1 , Sc2 , ・・・と表す
融合の場合
Cu2 + A1 , ・・・と表す

横脈(cross vein) 縦脈を連絡する横脈

同一主脈間の場合
M2 と M3 の場合・・・・m
異なる主脈間の場合
M と Cu の場合・・・・m + cu

(2009年11月4日 追加)
翅脈については、脈構造が複雑で現在のところ正確さを欠くと思われます。さらに詳細について調べていき、後日、追加・修正等を行うことを考えています。

肢部

肢部の構造
肢部の構造
中肢構造
中肢構造
前肢の湾曲
前肢の湾曲
  • シラキトビナナフシの肢は、歩くためのものであり、3対の肢はほとんど似ています。
  • 普通に静止している時の肢の向きは、前肢と中肢が前方に向いており、後肢は後方を向いています。
  • 3対の肢は、前肢・中肢・後肢からなり、それぞれ腿節・脛節・ふ節からできています。
  • ふ節は、5節から出来ていて、ふ節の先はふ節盤(5節目の先の部分)になっています。また、爪は2つあり、爪の間には、爪間盤があります。
  • 前肢の腿節基部は、やや外側に湾曲していて、前肢を伸ばして擬態状態になった時に、湾曲部にちょうど頭が収まるようになっています。
  • 3対の肢の腿節基部は、黄色くなっていて、他のトビナナフシと区別する時のポイントの一つになっています。
  • また、腿節・脛節・ふ節のそれぞれの先端は、環状に黒く色が入っています。
  • つかまった時などに肢を切って逃げる場合は、転節と腿節の境から切り落とします。

腹部

第11腹部背板(肛上板)は第10腹部背板下にあり、背面からは見えない
腹部背板 腹部背板(翅展開時)
腹部側面
腹部側面
気門1
気門1
気門2
気門2
第11腹部背板
第11腹部背板
第10腹部背板下
第10腹部背板下
  • シラキトビナナフシの腹部は、11節からできています。しかし、第1腹部背板・腹板は後胸と癒合しています。また、最後の第11節は肛上板と呼ばれる小片となっていて、第10腹部背板の下になるため腹部背面からは見えません。このため、一見9節に見えます。
  • 気門の対は、第8腹部節まであり、それ以降には気門はありません。気門対は全部で10対あります。
  • 第11腹部背板(肛上板)は、小片となって第10腹部背板下に隠れています。肛門開口部の両側には、第11腹部節の残片である肛側板があります。
  • 第10腹部背板の末端は、正中線上で三角状に分かれ、その両端は丸くなっています。この末端の形は、本種とトビナナフシ・ヤスマツトビナナフシとを区別するときの特徴の一つになっています。また、この末端の両側には1対の尾毛が見られます。尾毛は1節からなり、毛で覆われています。
  • 第8腹部腹板は、下蓋板と呼ばれ、船形に変形していて、3対の産卵弁を包み込むように保護しています。外部生殖器については、次の項を参考にして下さい。

外部生殖器

外部生殖器1
外部生殖器1
外部生殖器2
外部生殖器2
外部生殖器3
外部生殖器3
外部生殖器4
外部生殖器4
産卵弁1
産卵弁1
産卵弁2
産卵弁2
産卵弁3
産卵弁3
卵の構造
卵の構造
  • シラキトビナナフシのメスは、第8~10腹部背板と第8腹部腹板である下蓋板によって外部生殖器の主要部分である産卵弁を保護しています。
  • 産卵弁は、頭部側から下弁・中弁・上弁の3対からなり、この産卵弁を通して卵が生み出されます。
  • 第7腹部腹板の末端には、基部からY字状に分岐した角状の突起物が見られます。この突起物は、トビナナフシやヤスマツトビナナフシには見られない、本種特有のもので、著しい区別点になります。
  • 下蓋板の内側には、交尾嚢があると思われます。卵が産卵弁を通って生み出されるとき、下蓋板の方に必ず卵の精孔板・精孔が向いています。

参考文献等

  • 「動物系統分類学 7(下B) 節足動物(Ⅲb)昆虫類(中)」 内田亨 監修 中山書店 1971年6月20日 P206~215
  • 「昆虫の分類」 素木得一 北隆館 1955年1月15日 P18~34
  • 「ナナフシのすべて」 岡田 正哉 トンボ出版 1999年8月10日 P4・5、P24~26
  • 「新潟県のナナフシ類」 樋熊 清治 長岡市立科学博物館研究報告(8) 1973年 P8~13


(2007年12月21日 記述) 現在、継続して作成中です。

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