ナナフシの森

-シラキトビナナフシの窓-

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シラキトビナナフシの特徴と区別点

(ニホントビナナフシ・ヤスマツトビナナフシとの違い)

 日本で見られるトビナナフシ3種(シラキトビナナフシ・ニホントビナナフシ・ヤスマツトビナナフシ)については、見た目の形態や色彩が似ています。
 実際に採集・飼育・観察を行ったシラキトビナナフシの際立った特徴を明らかにし、実際に見ることの出来なかったニホントビナナフシとヤスマツトビナナフシについては、図鑑や文献、ホームページ、ブログなどを参考にしながら特徴を調べ、トビナナフシ3種の区別点を明らかにしようと思います。
 ここでは、それぞれのメスの成虫について記述していきます。また、幼虫段階での特徴と区別については、いずれ明らかになった時に載せたいと考えています。

第7腹部腹板後縁(尾蓋片前器)

シラキトビナナフシ
  Y字状の突起物がある
シラキトビナナフシの腹端
ヤスマツトビナナフシ
  特別なにもない
ヤスマツトビナナフシの腹端
ニホントビナナフシ
  小さな孔がある
ニホントビナナフシの腹端

前肢腿節基部

シラキトビナナフシ
  黄色くなっている
シラキトビナナフシの前肢
ヤスマツトビナナフシ
  緑色
ヤスマツトビナナフシの前肢
ニホントビナナフシ
  緑色
ニホントビナナフシの前肢

前翅側面(右側)

シラキトビナナフシ
  黒色部と白色部がほぼ同じ大きさ
シラキトビナナフシの前翅
ヤスマツトビナナフシ
  黒色部が白色部より小さい
ヤスマツトビナナフシの前翅
ニホントビナナフシ
  黒色部と白色部はほぼ同じ大きさだが、黒色部が細くなっている。下部は、赤茶色を帯びている
ニホントビナナフシの前翅

尾端背面(第10腹部背面)

シラキトビナナフシ
  末端は、正中線上で丸みを帯びた三角形状の二つの山形にわかれる。
   尾毛は、尾端とほぼ同じくらいの長さ。
   肛上板は見えない。
シラキトビナナフシの尾端
ヤスマツトビナナフシ
  末端は、全体が三角形状になっている。
   尾毛は、長く、末端を越えている。
   肛上板が見えている。
ヤスマツトビナナフシの尾端
ニホントビナナフシ
  末端は、幅広くなっている。
   尾毛は、末端より少し出ている。
   肛上板は見えない。
ニホントビナナフシの尾端

前胸・中胸背板

シラキトビナナフシ
  前胸背板の溝には「E」のような模様が見られる。
   前胸背板の縦溝と中胸背板の正中隆起線には、赤紫の幅広い帯が見られる。
   この赤紫の帯は、前翅から後翅まで続いている。
シラキトビナナフシの背面
ヤスマツトビナナフシ
  前胸背板と中胸背板は、緑色をしている。
   前翅と後翅も同じく緑色。
ヤスマツトビナナフシの背面
ニホントビナナフシ
  前胸背板と中胸背板の両側には、淡いオレンジ色の線が見られる。
ニホントビナナフシの背面

頭部側面

シラキトビナナフシ
  両側に薄い黄色い線が見られる。
シラキトビナナフシの頭部
ヤスマツトビナナフシ
  全体が緑色。
ヤスマツトビナナフシの頭部
ニホントビナナフシ
  両側に黄色い線が見られる。
ニホントビナナフシの頭部

シラキトビナナフシの卵
  大きさは、長径約2ミリ、短径約1ミリ。
   卵殻表面の網目模様が細かい。
   精孔版の周辺の網目模様が細かいが幅は狭い。
シラキトビナナフシの卵
ヤスマツトビナナフシの卵
  大きさは、長径約2ミリ、短径約1ミリ。
   卵殻表面の網目模様は大雑把で少ない。
   上の2つが俵型なのに対して角ばった形をしている。
ヤスマツトビナナフシの卵
ニホントビナナフシの卵
  大きさは、長径約2ミリ、短径約1ミリ。
   卵殻表面の網目模様が大雑把。
   精孔版の周辺の網目模様が細かいく幅が広い。
ニホントビナナフシの卵

初令の区別

シラキトビナナフシ
  体長は、12ミリ前後、触覚は10ミリ前後。
   体色は、薄い黄緑色。孵化してすぐの頃はクリーム色に近く、背面に薄い茶色の帯状の模様がみられる。
   複眼は、黒く見え、頭部の両横に飛び出ている。
   複眼の後方にある黒条は前胸の肩部にまで続いている。
  触覚には、黒い環が8個見られる。
シラキトビナナフシの初令の頭部 シラキトビナナフシの初令 シラキトビナナフシの初令の触角
ヤスマツトビナナフシ
  体長は約10ミリほどです。
   黄緑色の体に、赤茶色の模様が見られる。シラキトビナナフシよりも腹部背面の薄茶色がつながっている。
   触覚の黒い環がはっきりと14個見られる。
ヤスマツトビナナフシの初令の頭部 ヤスマツトビナナフシの初令 ヤスマツトビナナフシの初令の触角
ニホントビナナフシ
  体長は約10ミリほどです。
   黄緑色の体に、赤茶色の模様が見られる。
   触覚には、黒い環が14個ほど見られ、先端のほうの環は幅広くなっている。
   複眼の後方にある黒条はやや太く前胸の肩部にまで続いている。
ニホントビナナフシの初令の頭部 ニホントビナナフシの初令 ニホントビナナフシの初令の触角

2令の区別

シラキトビナナフシ
  体長は、18ミリ前後。
  体色は、薄い黄緑色。
   触覚には、黒い環が8個見られる。
  複眼は、黒く見えている。
シラキトビナナフシの2令 ヤスマツトビナナフシの2令
ヤスマツトビナナフシ
  体長は約18ミリ前後。
   体色は、薄い黄緑色。
   触覚の黒い環は、初令の頃14個はっきりと見られたが、2令では8個となっている。
  複眼は、白く見えている。
ヤスマツトビナナフシの2令 ヤスマツトビナナフシの2令

参考文献等

  • 「原色昆虫大圖鑑 [第Ⅲ巻]」 朝比奈 正二郎 他 北隆館 昭和40年5月30日
  • 「ナナフシのすべて」 岡田 正哉 トンボ出版 1999年8月10日
  • 「新潟県のナナフシ類」 樋熊 清治 長岡市立科学博物館研究報告(8) 1973年。
  • 「新潟県のナナフシ目昆虫」 長島 義介 新潟青陵大学紀要 第1号 2001年3月10日


(追記:2009年10月9日)
2009年10月6日にニホントビナナフシを飼育し始めたので、そのニホントビナナフシを元に画像を作成しました。

(追記:2009年10月17日)
ヤスマツトビナナフシの画像は、「clerotaの世界」のclerotaさんにいただきました。

(追記:2013年5月3日)
シラキトビナナフシ・ヤスマツトビナナフシ・ニホントビナナフシの初令の区別を追加しました。

(追記:2017年8月11日)
シラキトビナナフシ・ヤスマツトビナナフシの2令の区別を追加しました。

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