トップページ │ トビナナフシの窓 │ トビナナフシ日記 │フォトアルバム │ 昆虫アルバム │ 分布調査 │ リンク


シラキトビナナフシの小窓(ライフサイクル)

注意 画像が多いので表示に時間がかかります

シラキトビナナフシの一生 シラキトビナナフシの一生はどうなっているか?


 昆虫のほとんどは、卵から孵化して幼虫となり、最後に成虫となりますが、その過程で変態を行います。この変態には、完全変態と不完全変態、過変態、無変態の四つがあります。

 完全変態は、幼虫から成虫になるときに蛹という形態をとるものです。   卵⇒(孵化)⇒幼虫(数回脱皮)⇒(蛹化)⇒蛹⇒(羽化)⇒成虫
この完全変態を行う虫としては、チョウ・ハチ・ハエ・クワガタ・カブトムシなどがいます。この変態の幼虫は、イモムシの形をしていて成虫とはまったく異なる形態をとります。
 不完全変態は、幼虫が蛹を経ずに直接成虫になる形態をとるものです。  卵⇒(孵化)⇒幼虫(数回脱皮)⇒(羽化)⇒成虫
この不完全変態を行う虫には、セミ・トンボ・バッタ・カマキリ・ナナフシ・ゴキブリなどがいます。この変態の幼虫と成虫の形態はにていて、バッタやカマキリ、ナナフシなどでは、体の大きさが違うことと、翅が生えているかどうか位の違いしかありません。
 
 このようにシラキトビナナフシは、不完全変態という形態をとる昆虫になります。
その一生は、細かく見ると次のようになります。

 ⇒(孵化)⇒初令幼虫⇒(脱皮)⇒幼虫⇒(脱皮)⇒・・・数回・・・⇒終令幼虫⇒(羽化)⇒成虫⇒産卵(単為生殖)

 私が、初めてシラキトビナナフシを見たのは2007年8月下旬でした。このライフサイクルの中でいうと、成虫段階の個体で、すぐに産卵をし始めました。
そのため、現段階で直接観察できているのは、成虫から産卵、冬季の卵についてまでです。しかし、シラキトビナナフシのオスが自然界でも飼育下でもまだ発見されていないようなので、完全な単為生殖なのかどうかについては不明です。また、幼虫が脱皮する回数もよくわかりません。
 今後、我家で保管中のシラキトビナナフシの卵の観察や、ミズナラの林での観察を通して、シラキトビナナフシの一生(ライフサイクル)について明らかにしていきたいと思います。

(2008年3月23日 記録)

 2008年6月1日にシラキトビナナフシの初令幼虫を採集してからは、全てのステージの幼虫を採集することができました。また、それらの個体の飼育も並行して行うことによって、野外での状態との比較も行うことができました。
 昨年の8月26日にシラキトビナナフシを初めて発見してから、一年が経過した現在、野外では成虫が産卵を開始しているところです。
一年間のサイクルを調べることが出来たところですが、成虫の状態について昨年との比較を考えながら今後も野外観察を継続していきたいと考えています。

(2008年8月30日 記録)


 2007年8月から2009年7月までのシラキトビナナフシの野外観察と飼育観察を通して見えてきた生活史について、概略をまとめてみました。北海道函館市における一つの仮説として見ていただき、他の地域での野外観察の参考としてください。

シラキトビナナフシの野外生活史

(2009年7月12日 記録)

シラキトビナナフシのライフサイクルについて 


 シラキトビナナフシのライフサイクルを考える上で、その生息環境も含めて考えていきたいと思います。具体的には、不完全変態のサイクルと、シラキトビナナフシの食樹の一つであるミズナラの様子、ミズナラ林の林床や林内の様子、気温や降水量、積雪量などシラキトビナナフシを取り巻く諸条件を含めて考察していきます。
 以下の表は、2007年8月下旬から現時点まででわかっている事柄を記録したものになっています。

2007年 8月  9月  10月  11月  12月

 2008年 1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月 

2008年と2009年の詳細な記録は、「野外観察・飼育観察」を参照して下さい。

 (クリックすると見たい月に飛びます)

状態
(上旬)
(中旬)
(下旬)
シラキトビナナフシの様子 シラキトビナナフシの
画像
ミズナラの様子
(※3)
林内・林床の様子 気温
(※1)
降水量(※2)
2007年の記録
8月 . . . . . 最高
24.2℃

179o
もどる
. . 2007年8月26日に初めてシラキトビナナフシを発見する . . 最低
17.5℃
-
卵 成虫 成虫が林内の下草の上に数十匹見られる .
. . 平均
20.9℃
.
9月 卵 成虫 下草の上で見つける数が減ってくる . 最高
21.0℃

175o
もどる
卵 成虫 下草の上で見つけることが難しくなり、時間をかけて探してようやく見つかる程度となる . . 最低
12.6℃
-
卵 成虫 ミズナラやコナラの樹上で長時間探してようやく見つけれる程度となる 平均
16.8℃
.
10月 卵 成虫? いくら探しても見つけることが出来なくなる 成虫の姿は
見られなくなる
紅葉が進み始めます 最高
15.5℃

126o
もどる
成虫はまったく見つからず、長時間探して卵を1個見つけれる 最低
6.3℃
-
ほとんどの葉が枯れてしまい成虫はまったくいなくなる 平均
10.9℃
.
11月 落葉の下で卵が
眠っている
. 最高
8.4℃

117mm
もどる
落葉の下で卵が
眠っている
飼育下の最後のシラキトビナナフシが死亡 枯葉が落ちずに
ついています
雪が降り始めます 最低
0.8℃
-
積雪の下で卵が
眠っている
(積雪下の温度は0℃)
. 枯葉が落ちずに
ついています
平均
4.6℃
.
12月 積雪の下で卵が
眠っている
(積雪下の温度は0℃)
. 枯葉が落ちずに
ついています
雪に閉ざされています 最高
2.3℃

100o
もどる
積雪の下で卵が
眠っている
(積雪下の温度は0℃)
. 枯葉が落ちずに
ついています
雪に閉ざされています 最低
−4.3℃

31cm
積雪の下で卵が
眠っている
(積雪下の温度は0℃)
. 枯葉が落ちずに
ついています
雪に閉ざされています 平均
−1.0℃
.
2008年の記録
1月
積雪の下で卵が
眠っている
(積雪下の温度は0℃)
. 枯葉が落ちずに
ついています
最高
−4.0℃

94o
もどる
積雪の下で卵が
眠っている
(積雪下の温度は0℃)
. 枯葉が落ちずに
ついています
雪に閉ざされています 最低
−7.1℃

67cm
積雪の下で卵が
眠っている
(積雪下の温度は0℃)
. 枯葉が落ちずに
ついています
雪に閉ざされています 平均
−3.8℃
.
2月 積雪の下で卵が
眠っている
(積雪下の温度は0℃)
. 枯葉が落ちずに
ついています
雪に閉ざされています 最高
-2.0℃

85o
もどる
積雪の下で卵が
眠っている
(積雪下の温度は0℃)
. 枯葉が落ちずに
ついています
雪に閉ざされています 最低
−7.0℃

87cm
積雪の下で卵が
眠っている
(積雪下の温度は0℃)
. 枯葉が落ちずに
ついています
雪に閉ざされています 平均
−3.6℃
.
3月 積雪の下で卵が
眠っている
(積雪下の温度は0℃)
. 最高
3.7℃

71o
もどる
積雪の下で卵が
眠っている
(積雪下の温度は0℃)
(テントウムシ、カメムシなどが越冬から
目覚め始める)
冬芽はまだ膨らんで
いません
急激に雪が融け始めます 最低
−3.4℃

71cm
雪融け後の落葉の下で卵が眠っている (アリ、テントウムシ、カメムシ、タテハチョウなどが見られる。
カエルも冬眠から覚めて池に集まっている)
冬芽はまだ膨らんで
いません
平均
2.0℃
.
4月 湿った林床の中で卵は眠っている (アメンボ、ハムシなどが見られる。
土の中ではミミズも活動を始めている)
最高
9.9℃

85o
もどる
下草の芽生えた林床の中で卵は眠っている (キアゲハ・スジグロチョウ・ハチ・ハサミムシなどが見られ、活発に活動している。) 最低
1.9℃
-
下草の芽生えた林床の中で卵は眠っている . 平均
5.9℃
.
5月 下草の生えた林
床の中で卵は眠っている
(ミズナラの若葉がついているが、シラキトビナナフシの幼虫は見られない) 最高
15.7℃

117o
もどる
下草の生えた林
床の中で卵は眠っている
(ミズナラ・コナラともに若葉が生い茂ってきたが、シラキトビナナフシの幼虫は見られない) 最低
7.2℃
-


孵化?
下草の生えた林
床の中で卵は眠っている

孵化が始まっている可能性がある?
(ミズナラ・コナラともに若葉が完全に生い茂ってきたが、シラキトビナナフシの幼虫は見られない) ミズナラの葉 ミズナラの林 平均
11.5℃
.
6月 初令幼虫 6月1日に初令幼虫を採集する。
5月下旬には孵化が始まったと思われる。
 詳細⇒こちら
孵化したての初令幼虫 最高
18.7℃

125o
もどる
初令幼虫/
2令幼虫
6月8日と6月14日に初令幼虫を採集する。
6月1日の個体は2令に脱皮。
 詳細⇒こちら
シラキトビナナフシの初令幼虫 最低
10.6℃
-
2令幼虫

3令幼虫
6月21日〜7月5日まで2令幼虫を採集。
6月1日の個体は3令に脱皮する。
 詳細⇒こちら
シラキトビナナフシの2令幼虫 平均
14.7℃
.
7月 3令幼虫/
4令幼虫
7月1日・5日に2令幼虫を採集。
7月5日・6日には3令幼虫を採集。
7月9日には4令幼虫を採集。
シラキトビナナフシの3令幼虫 最高
22.6℃

131o
もどる
4令幼虫

5令幼虫
飼育中の個体はほとんど5令幼虫に脱皮している。
7月20日に4令幼虫と5令幼虫を採集。
シラキトビナナフシの4令幼虫 最低
15.5℃
-
5令幼虫

6令幼虫
飼育中の個体はほとんど6令幼虫に脱皮している。
7月26日に5令幼虫と6令幼虫を採集。
脱皮直後の6令幼虫 平均
19.1℃
.
8月 6令幼虫

成虫?
飼育中の個体の半分は成虫に羽化している。
1日に1頭、6日に6頭、9日に1頭、10日に4頭の6令幼虫を採集。
シラキトビナナフシの6令幼虫 ミズナラの実がつき始めている 最高
24.2℃

179o
もどる
6令幼虫

成虫
8月12日に成虫を3頭発見する。
6令幼虫の3頭も背面に赤紫色が浮き出ており羽化間じかの個体が多い。
シラキトビナナフシの成虫 最低
17.5℃
-
卵 成虫 8月23日と26日に成虫をそれぞれ3頭ずつ発見する。
8月30日には成虫を11頭発見する。
シラキトビナナフシの成虫 平均
20.9℃
.
9月 卵 成虫 9月1日、2日、3日、5日、7日のいずれも成虫を発見する。同じ個体が同じ場所で産卵をしている。 産卵中のシラキトビナナフシ ミズナラの葉 ミズナラの林 最高
21.0℃

175o
もどる
卵 成虫 10日、14日、15日に成虫を発見する。9月上旬に見つけたのと同じ個体が見られる。だんだんと見られる数が減っていく。 産卵中のシラキトビナナフシ ミズナラの葉の食痕 ミズナラの林 最低
12.6℃
-
卵 成虫 20日と28日には、地上で死んだばかりの個体を発見する。
20日に1頭、23日に2頭の成虫を確認しただけで、ほとんど見ることが出来なくなってくる。
自然に死亡しているシラキトビナナフシ ミズナラの葉 ミズナラの林 平均
16.8℃
.
10月 卵 成虫 まったくシラキの姿を見ることが出来なくなっているが、9月28日に成虫の死んだばかりの個体があったことを考えると、少ないが成虫は生存していると思われる。 野外でのシラキトビナナフシの卵 紅葉の始まったミズナラの葉 黄葉の始まったミズナラの林 最高
15.5℃

126o
もどる
卵 成虫 12日と18日に、地上で成虫を発見する。
野外で、シラキの卵を発見する。(計4個)

    こちらを参照
地上に降りていたシラキトビナナフシの成虫 枯れてきたミズナラの葉 黄葉の進むミズナラの林 最低
6.3℃
-
ほとんどのミズナラ・コナラの葉が、枯れたり黄葉しているので、シラキの成虫を見ることはできなくなっている。 野外でシラキトビナナフシの成虫を見ることが出来ない。
飼育下の成虫も20数頭いたものが2頭だけとなってしまった。
枯れたミズナラの葉 ほとんど枯れたり紅葉している 平均
10.9℃
.
11月 ほとんどのミズナラ・コナラの葉が、枯れたり黄葉しているので、シラキの成虫を見ることはできなくなっている。 野外でシラキトビナナフシの成虫を見ることが出来ない。 最高
8.4℃

117mm
もどる
葉の枯れ具合から、シラキトビナナフシが生存している可能性はほとんどないと思われる。
 

飼育中の個体
最低
0.8℃
-
積雪の下で卵が
眠っている
(積雪下の温度は0℃)
飼育中の最後の個体が
20日に死亡した。
ミズナラの林(冬) 平均
4.6℃
.
12月 積雪の下で卵が
眠っている
(積雪下の温度は0℃)
. ミズナラの冬芽 ミズナラの林(冬) 最高
2.3℃

100o
もどる
積雪の下で卵が
眠っている
(積雪下の温度は0℃)
. 冬芽だけです ミズナラの林(冬) 最低
−4.3℃

31cm
積雪の下で卵が
眠っている
(積雪下の温度は0℃)
. 冬芽だけです 雪に閉ざされています 平均
−1.0℃
.
備考
(平均・年間)
. . . . . 最高気温の平均

11.8℃
降水量
1405mm
もどる
. . . . . 最低気温の平均

4.2℃
最深
積雪量
. . . . . 年間気温の平均

8.0℃
.

※1 気温は、各月の上段が最高気温、中段が最低気温、下段が平均気温です。
※2 降水量は、各月の上段が降水量、中段が最深積雪量です。
    上記の※1と※2のデータは「国土交通省 国土計画局 総務課 国土情報整備室 作成の気候値メッシュデータ」を利用しています。
    この観察場所のメッシュコードは62406611です。
※3 この場所の植生は、環境省自然環境局生物多様性センターの自然環境保全基礎調査(第5回植生調査3次メッシュ植生データ)によりますと、
    ブナ-ミズナラ群落となっています。

(2008年3月28日 記録)
(2008年4月6日・4月20日・5月3日・5月15日・5月28日・6月3日・6月15日・7月16日 追記)
(2008年7月31日 6月と7月の記述を一部修正)
(2008年5月28日 メッシュコード修正・気候値修正)
(2008年8月9日・8月12日・8月30日・9月7日・10月6日・10月13日・10月19日・11月1日・11月16日・11月25日・12月14日・12月28日 追記)

2007年 8月  9月  10月  11月  12月

 2008年 1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月  

(クリックすると見たい月に飛びます)


シラキトビナナフシのライフサイクルについての考察


 シラキトビナナフシの野外生活史について(北海道函館市の場合)

 2007年8月から2009年7月までの野外観察と飼育観察をもとにして、北海道函館市におけるシラキトビナナフシの野外生活史を簡単にまとめてみました。野外での観察には限界もありますので、あくまでも一つの仮説として参考にして下さい。

 函館市では、シラキトビナナフシは年1化で、越冬した卵は、5月末から6月中旬に孵化してきます。九州におけるトビナナフシ類のように年2回にわたる孵化(安松1942)は見られませんでした。孵化した幼虫(初令)は、5回の脱皮を行いながら6令まで成長し、8月上旬から8月20日前後に羽化(脱皮)して成虫となります。その後、10日ほどで産卵を開始し、およそ2ヵ月にわたって産卵し続けて一生を終えます。【詳細な観察内容は、「飼育観察日記」を参照して下さい】


 成長の目安としては、孵化が5月末から6月中旬、2令への脱皮が6月10日前後から6月下旬、3令への脱皮が6月下旬から7月10日前後、4令への脱皮が7月上旬から7月20日前後、5令への脱皮が7月中旬から8月上旬、6令への脱皮が7月下旬から8月10日前後、成虫への羽化が8月上旬から8月20日前後と考えられます。

 野外では、8月下旬からミズナラやコナラの目線あたりの高さの部分や下草の部分で見られる個体数が急激に増え始めますが、これらの食樹が黄葉し始める頃から個体数が急激に減りだし、これらの葉が枯れ始める頃にはほとんどその姿を見かけることが出来なくなります。野外の観察では、10月下旬が最後の目撃になっています。飼育下では、最後の個体は雪が降り始める11月中旬まで生存していました。

 卵期は、最長で8月中旬から翌年の6月中旬までの約10ヶ月間あります。この間、11月中旬から3月中旬までの約4ヶ月間は積雪下で越冬しています。
 これまでに観察した個体は、すべてがメスで、オスの存在は未知(岡田1999)です。メスだけの単為生殖を繰り返していると思われます。


 函館市におけるシラキトビナナフシの生活史の概略を下図にまとめてみました。
 ※気温については、気象庁の気象統計情報にある2008年函館の旬ごとの値を利用しています。
 ※函館海洋気象台と観察地の標高差は約 100mほどありますので、図の気温よりも観察地の方が0.5度ほど低くなっています。


シラキトビナナフシのライフサイクルについては、継続して調べて行きたいと思っています。

アルバムへ戻るボタン

トップページ │ トビナナフシの窓 │ トビナナフシ日記 │フォトアルバム │ 昆虫アルバム │ 分布調査 │ リンク
inserted by FC2 system