シラキトビナナフシの採集は、自然の中で行われますので、十分に注意が必要です。
@山に入ることになるので、天候には十分注意する。(大雨・洪水・雷など)
A地形に十分注意する。(がけ・穴やくぼみ・落石など)
B熊や毒蛇などに注意する。(北海道のヒグマは特に注意が必要です。毎年のように死亡事故が起きています。またマムシなどの毒蛇にも注意が必要)
C木を叩いたりゆすったり、下草を掬ったりするときは、スズメバチなどに注意することが必要です。(ハチ・ドクガ・クモ・ダニなどに注意する。)
D私有地に無断で入ったり、木を切り倒したり、枝や葉、下草などを無意味に荒らしたりしないよう、採集マナーに注意することが必要です。
E採集する場合は、必要なだけにして、持ち帰るときも飼育できる分だけにします。
シラキトビナナフシを採集するには、当然エサとなる木のある場所でなければ見つかりません。
シラキトビナナフシは、ミズナラ・コナラ・ブナ・クリなどの木の葉を食べます。(詳しくは「シラキトビナナフシのエサ」を参照して下さい)
これらの木が一定程度まとまった林を見つけて探すことになります。
これらの木の葉の形についてもよく見ておくと食べられた跡なのかもともとの形なのかが区別できます。
シラキトビナナフシは、葉の周辺部から食べ進みますので、葉の中ほどに穴を開けて食べることはありません。
しかし、ミズナラやコナラなどの樹は、高いものになると十数メートルから二十数メートルにもなりますので、高い部分の葉の様子を確認することは難しいので、葉の様子は低い部分で確認することになります。
シラキトビナナフシは、基本的には夜行性です。日中は木の葉の上で、前肢と触覚を前方へ突き出した形で擬態しています。
ミズナラやコナラの樹上にいるときは、葉の表側にじっと擬態しています。
目線近くの葉ですと葉の表側を見ることが出来ますが、高い部分の葉ですと下から見上げて探すことになります。
(実際の見え方については、アルバム「2007年9月23日」と「2007年9月24日」を参照して下さい)
また、シラキトビナナフシの一生(ライフサイクル)について事前に把握しておくことで、出現時期を判断することができます。
@卵から孵化したしたばかりや初令の時期は、ミズナラなどの葉も開いたばかりの時期と重なると思われます。捕食される前なので数も多いはずです。木の下草や割と低いところを注意深く探すといいと思います。
Aしかし、シラキトビナナフシは樹上での生活が主であり、上へ上へと登っていくので、時間が経つと樹冠のほうに移動していってしまい、見つけるのが難しくなります。また、夏になってくると木の葉もどんどん増えて葉の大きさも大きくなり、葉と葉が重なり合いますます見つけるのが困難になってきます。
B8月中旬前後に幼虫から成虫へ脱皮し、産卵を始めるころになると、何故かは不明ですが、下草の上にたくさんの成虫が見られるようになります。食草でもない葉の上や笹の葉などに群れています。(アルバム「2007年8月26日」を参照して下さい)
葉の上などに卵が落ちずに残っている場合もあります。
Cしかし、この状態も長く続くわけでなく、9月に入るとシラキトビナナフシが下草から姿を消し始めます。樹上に見つけることが出来ますが、数は急激に少なくなってきます。紅葉が始まるころにはほとんど見られなくなります。
昆虫の採集方法には、その昆虫に合わせていろいろな方法があります。
シラキトビナナフシを採集するには、見つけ採り法(ルッキング・サーチング)、掬いどり法(スウィーピング)、叩き網法(ビーティング)の3つの方法が基本になります。
いづれにしても上記の「採集場所について」や「生態と出現時期について」などを事前に把握しておくことによって見つけ出す可能性が高くなります。
これから説明する方法は、ブナ林やミズナラ林・コナラ林などのエサとなる木のある場所で行うことになります。
(1)見つけ採り法(ルッキング・サーチング)
エサとなる木の葉を注意深く見ながらシラキトビナナフシを見つける方法です。
ほとんどの場合、シラキトビナナフシは葉の表側に擬態して動かないでいます。
@目線の高さくらいの葉でしたら枝ごとにゆっくり見ていくことで見つけることができます。
A高いところの葉は、裏側から見ることになるので、日の光があたって葉が透けているようなところにシラキトビナナフシのシルエットが見えて見つけることができます。(曇りの日より晴れの日のほうが探しやすいです)
B木の真下よりも少し離れた場所から斜めに葉を見ることによって、葉の表面についているシラキトビナナフシを横から見つけることができます。
C孵化した直後や成虫になったころだと、下草の葉でも見つけることができます。(注意深く林の中を探すことが必要です)
この方法は、採集だけでなく、野外での観察のときにも必要な一番基本的な方法です。一度見つけると、他の昆虫と違って飛んでいったりしませんので、ゆっくりと採集や観察をすることができます。目が慣れてくるとシラキトビナナフシがいる時期であれば簡単に見つけれるようになります。
捕まえるときは、手でとることもできますし、網ですくうこともできます。
@目線のあたり |
A高いところ |
B横から |
C下草のところ |
(2)掬いどり法(スウィーピング)
昆虫採集用の網を持って、下草の葉の上やエサとなる木の葉を左右に何度か振って採集する方法です。
下草が深くて入りづらいところや、高い木の上などのシラキトビナナフシを採集するときに用います。目で確認できない部分にいる場合に有効な方法です。
網の大きさや、柄の長さなどは、スウィーピングする場所によって変わってきます。シラキトビナナフシの場合、高い部分にいることが多いので長い柄のものが必要になります。
網は、専門の昆虫網はかなり高価なので、普通に売っている虫取り網で十分ですし、長い柄も多段式の釣り竿を利用して自作してもかまいません。
ただし、草や葉を何度も掬うので、網と柄のつなぎ目は補強しておくほうがいいです。
掬うときの速さや強さは、木の枝に引っかかることや、草などの強さによっていろいろ調節します。あまりにも強く振ったりするとナナフシがいてもつぶれたりしてしまいます。
(3)叩き網法(ビーティング)
木の枝などの下に、特別の広い網を置いて、枝や葉を叩いたりゆすったりして落ちてくる虫を捕らえる方法です。
下に置くものは、ビーディング専門の網もありますが、天竺さらしなどの70センチ四方の布を対角線に組んだ竹や木で補強したものを作ってもいいです。
また、小さなレジャーシートをひいた上で枝を叩いたりゆすったりしても行うことができます。傘を逆さにして使っても代用できます。
シラキトビナナフシの卵を採集するためには、確実に成虫のいる場所で探すことになります。
卵の大きさは、2ミリほどしかありませんし、色も茶色や灰色など土や砂と見分けがつきにくい色です。さらに、まとまって産卵するのでなくバラマキ産卵なので、自然の中で闇雲に探しても見つかるものではありません。
実際、確実に卵があるのが分かっている場所でも何時間も探してやっと1個見つかるというほど難しいものです。
(アルバム「2007.10.21」と「2007.10.28」を参照してください)
一番確実な方法は、シラキトビナナフシの成虫を1〜2週間以上飼育することです。産卵し始めると飼育ケースの中でもすぐに卵を産み始めます。飼育期間にもよりますがかなりの数の卵を回収することができます。(「シラキトビナナフシの産卵」を参照してください)
野外での卵を採集したいときは、成虫のいる下草の葉の上などに卵が残っている場合もありますので丁寧に探して見ます。
また、成虫のいるミズナラの木の下や、下草の下に、シートを敷いて置いたり、洗面器やバットなどの容器を置いておくと卵を回収できます。
雨が降ったり、産卵時期から時間が経ったりしている時は、卵が枯葉の下になったり、土に埋まったりして、見つけ出すのはさらに困難になります。
このような場合は、コケの上や、切り株の上など、を注意深く探すことによって見つけることが可能になります。しかし、小さいものなので時間がものすごくかかります。
コケの上などで小さなつぶを見つけても、肉眼では良くわからないので、ルーペを使って確認していきます。
画像のルーペは、約30倍のものですが、数倍ほどの虫眼鏡のほうが視野が広いので見やすいかもしれません。
まだ試したことはありませんが、産卵場所の土をふるいにかけて探す方法なども考えられます。
(2008年4月20日 記載)
2008年のシラキトビナナフシの卵の野外での採集は、合計7個でした。(詳しくは、こちらを参照して下さい)
広い林の中で、2ミリほどの卵を見つけ出すのは、ほとんど不可能に近い状態です。
実際に見つけることが出来たのは、枯葉の上、アスファルトの上、コケの上などです。時期にもよりますが、産卵の最盛期よりも産卵から時間が経っている場合は、更に困難になります。雨で流されたり、枯れ葉や石・土の隙間に入ったり、1個を見つけるのに、地面やコケの上を見続けて1〜2時間ほどかかっています。
気をつけなければならないのは、ずっとしゃがんだ状態で下を見続けているので、立ち上がった時に急激にめまいが襲ってきます。
休み休み探さなければ、転んだりして危険です。
2008年野外採集卵 10月11日 1個 10月12日 3個 10月19日 1個 11月 1日 1個 11月14日 1個 合 計 7個 |
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↑ 2008年10月11日採集 | ↑ 2008年10月12日採集 | ↑ 2008年10月19日採集 | |
↑ 2008年11月1日採集 | ↑ 2008年11月14日採集 |
(2009年10月14日 追記)
2009年10月15日、今年初めての野外でのシラキトビナナフシの卵を発見しました。一つ目は、コナラの木の下のコケの上からです。
もう一つは、枯葉の上からです。卵らしきものを見つけても、肉眼では良くわからないので、ルーペを使って確認しながらの作業になります。
2009年10月15日採集 | コケの上 | 2009年10月15日採集 | 枯葉の上 |
採集場所(画面中央に卵あり) | 採集場所(画面中央に卵あり) |
(2009年10月16日 追記)
2010年の野外採集卵の様子はアルバムにあります。
@ 2010年9月20日 フォトアルバム (5個採集) A 2010年10月2日 フォトアルバム (11個採集)
(2010年10月3日 追記)
シラキトビナナフシは、手足が細くとれやすいし、捕まったときに自ら肢を切って逃げようとしますので、乱暴に扱ったり、肢を持ってつまんだりしないようにします。
シラキトビナナフシは、意外と動きがすばやく、前からつかもうとすると後ろへパッと後づさりしたり、横へ逃げたりします。歩く早さも意外と早く、ケースのふたを開けておくとすぐに出てきます。それでもバッタやトンボなどと違って飛んでいってしまったりするわけでないので、あせらずに対応すれば逃げられたりしません。
シラキトビナナフシを持つときは、掌でくるむようにしたり、手の上を這わせるようにすると割りと楽に持つことができます。
(2008年4月20日 記載)
シラキトビナナフシの採集方法については、継続して調べて行きたいと思っています。