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昆虫アルバム

クモガタガガンボの記録   更新日 : 2013年1月14日
クモガタガガンボについて 参考文献 動画 観察場所
観察の記録(2011以前) 観察(2012年) 観察(2013年) .
飼育の記録(2011以前) 飼育(2012年) 飼育(2013年) .

 クモガタガガンボについて
和名 学名 分布
チビクモガタガガンボ Chionea (Chionea) crassipes gracilistyla Alexander, 1936 日本(北海道・本州)
ロシア・北朝鮮・韓国
カネノクモガタガガンボ Chionea (Chionea) kanenoi Sasakawa, 1986 日本(本州)
ニッポンクモガタガガンボ Chionea (Chionea) nipponica Alexander, 1932 日本(北海道・本州・九州)
ロシア
日本に分布するとされているクモガタガガンボは、3種が記載されています。
しかし、詳しい生態などが十分に解明されていないため、3種以上が生息するのかも分かりません。
北海道には2種が生息することになっていますが、具体的な同定は今のところ良く分かりません。
大型(左上)の個体と小型(右下)の個体 2010年1月24日に採集したオスです。
上の大型は約5ミリくらい、後肢の腿節が太く、色は焦げ茶色をしています。
下の小型は約3ミリくらい、後肢の腿節が細く、色は薄い茶色をしています。

北海道には2種類が生息することになっていますが、
この2頭が種類の違いなのか、単なる個体差なのかは、今のところはっきりしません。

取り敢えずは、大型・小型という区別を使用します。
大型(右)の個体と小型(左)の個体 2010年1月31日に採集したメスです。
左側は、体長が約3.5ミリの小型のメスです。
右側は、体長が約5.0ミリの大型のメスです。

このような違いは、オスの個体でも見られたものと同じと思われます。

このような違いが、種の違いなのか、単なる個体差なのか、今後の課題です。

チビクモガタガガンボとニッポンクモガタガガンボが北海道に分布することから、可能性としては、

大型のほうが、ニッポンクモガタガガンボ
小型のほうが、チビクモガタガガンボ

と言えるかもしれません。
しかし、詳細は今後の調査が必要と思われます。


 クモガタガガンボの野外観察   
2009年12月19日 2010年1月17日 2010年1月20日 2010年1月24日
2010年1月31日 2010年2月6日 2010年2月7日 2010年2月11日
2011年2月11日
2009年12月19日 函館市
クモガタガガンボの仲間クモガタガガンボの仲間
クモガタガガンボの仲間クモガタガガンボの仲間
雪面を動いている黒いものが見えました。見た目はクモのようでしたが、クモガタガガンボの仲間です。
午後2時半でも気温が氷点下2.5度くらいの真冬日で、雪がちらついているときに発見しました。
オス・メスともに翅が退化してありません。後翅が平均棍として残っています。
画像の個体は、腹端がとがっているのでメスです。オスの場合は、腹端が把握器になっています。
冬の厳寒期(12月〜3月)に活動する虫ですが、活動に適した温度は、1度からマイナス6度くらいです。
2009年12月19日 函館市
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2010年1月17日 函館市
クモガタガガンボの仲間(オス)クモガタガガンボの仲間(オス) 拡大画像1
14時30分頃発見、小川の斜面を登っていたオスの個体(気温は氷点下2度くらい)
クモガタガガンボの仲間(オス)クモガタガガンボの仲間(オス) 拡大画像2
15時12分頃発見、小川の斜面を登っていたオスの個体(気温は氷点下2.5度くらい)
クモガタガガンボの仲間(メス)クモガタガガンボの仲間(メス) 拡大画像3
15時30分頃発見、道路のガードレール下を歩いていたメスの個体(気温は氷点下2.5度くらい)

1月14日から寒波で真冬日が続き、雪も毎日降り続いていました。
本日の午前4時頃に氷点下13度を記録しましたが、日中は一気に氷点下1度くらいにまで上がりました。
風はほとんど吹いていない穏やかな晴れの日でした。

2010年1月17日撮影 函館市
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2010年1月20日 函館市
クモガタガガンボのオスクモガタガガンボのオス
↑ 15時頃発見(気温約7度) 緩やかな斜面を歩いていたオスの個体
クモガタガガンボのメス(死亡)クモガタガガンボのメス(死亡)
クモガタガガンボのメス(死亡)クモガタガガンボのメス(死亡)
↑ 15時20分頃発見(気温約7度) 雪面で死亡していたメスの個体
体全体が小さな窪みの中に入っていた。
クモガタガガンボのメス(死亡)クモガタガガンボのメス(死亡)
↑ 15時45分頃発見(気温約6度) 雪面で死亡していたメスの個体
体全体が小さな窪みの中に入っていた。
クモガタガガンボのメスクモガタガガンボのメス
↑ 15時50分頃発見(気温約6度) 雪面を歩いていたメス個体。
腹部が膨らんでいなく、割合ほっそりしていた。

低気圧に南からの暖気が入り最高気温が8.9度にまで上がった一日でした。
活動適温と言われている気温を遥かに超えていますが、歩いている個体を2頭観察できました。
死亡している個体は、2頭とも雪の中には入っておらず、17日以降に死亡したものと思われます。
産卵後なのか、産卵前なのか、暑さのため死亡したのかなど、詳しいことは不明です。

2010年1月20日撮影 函館市
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2010年1月24日 函館市
クモガタガガンボのオス(大型)
1頭目(14時17分頃)大型オス 気温1.6度
道路の脇
クモガタガガンボのオス(大型)
2頭目(14時53分頃)大型オス 気温1.3度
小川のそば (右の中肢が欠損) 【動画参照】
クモガタガガンボのオス(小型)
3頭目(15時8分頃)小型オス 気温1.3度
雑木林のわき
クモガタガガンボのオス(小型)
4頭目(15時14分頃)小型オス 気温1.3度
雑木林のわき
雪の隙間に入るクモガタガガンボのオス
雪の隙間に入るクモガタガガンボのオス(3頭目)
笹の隙間に入るクモガタガガンボのオス
笹の隙間に入るクモガタガガンボのオス(4頭目)
クモガタガガンボのオス(大型)
5頭目(16時7分)大型オス 気温1.6度
ススキ原の付近
クモガタガガンボのメス(小型)
6頭目(16時18分)小型メス 気温1.6度
ススキ原の付近
本日は、曇り、風が少し、気温は約1.5度前後。
探し始めてすぐに大型のオスが見つかりました。

3頭目のオスは、歩きながら雪の隙間に入り込んでいき、かなり奥深くまで入っていきましたが、
歩き方が早いので、ちょっと待っていると出てきました。

しかし、このオスは、先の2頭のオスよりも何となく体が一回り小さい感じがします。
タッパーの中で比較して見ると、大きさは明らかに違います。
大きいほうは約5ミリくらい、後肢の腿節が太く、色は焦げ茶色をしています。
小さいほうは約3ミリくらい、後肢の腿節が細く、色は薄い茶色をしています。
ここ函館には、2種類のクモガタガガンボがいるようです。

4頭目のオスは、笹の葉の突き出た雪の隙間を目指して歩いていきます。
このような隙間は、地面にまで続いているので、おそらく地面と雪面との出入り口になっているのだと思われます。

少しは日が長くなってきたとはいえ、山の夕方は暮れるのが早く、辺りは薄暗くなってきました。
この日5頭目は大型のオスです。この場所は、辺りがススキの原で、毎回必ず見つけている場所です。
すぐに、この日初めてのメスが見つかりました。小型のメスです。
すぐ横には、ススキの枯れ枝がたくさんあります。
この枯れ枝の隙間は、風などのためにけっこうな大きさになっています。
おそらくこのススキの隙間から出てきたものと思われます。

2010年1月24日撮影 函館市
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2010年1月31日 函館市
クモガタガガンボ(小型メス)
@11時47分 小型メス(3.5ミリ) 気温4.5度位
ミズナラを主体とする雑木林の斜面
クモガタガガンボ(小型メス)
A11時51分 小型メス(3.5ミリ) 気温4.5度位
ミズナラを主体とする雑木林の斜面
クモガタガガンボ(小型メス)
B12時55分 小型メス(3.5ミリ) 気温5度位
湧き水の流れるそば
クモガタガガンボ(大型メス)
C13時35分 大型メス(5ミリ) 気温5.5度位
小川の流れるそば 【動画参照】
前日は、最低気温が氷点下10度、最高気温が氷点下4度という真冬日でした。
本日は、気温は4度を超えた位で、天気は晴れです。
10時30分頃から探し始め、なかなか見つからずにいましたが、立て続けに小型のメスを2頭発見。
更に1時間ほどして、小型のメスを発見し、その後、40分ほどで大型のメスを発見。
本日は、メスばかりが見つかりました。

2010年1月31日撮影 函館市
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2010年2月6日 函館市
本日は、14時頃からクモガタガガンボを探しに山に入りましたが、全く見当たりませんでした。
前日からの10数センチの新雪と、14時の気温が氷点下8度前後、晴れの天気という条件なので、出てこないのかもしれません。
さらに、2月に入いてからの連日の真冬日というのも関係しているのかもしれません。

参考までに気温の記録を載せておくことにします。
2月1日 平均気温−4.2度、最高気温−0.3度、最低気温−6.1度
2月2日 平均気温−6.6度、最高気温−3.8度、最低気温−10.1度
2月3日 平均気温−10.4度、最高気温−7.9度、最低気温−13.8度
2月4日 平均気温−8.7度、最高気温−4.9度、最低気温−12.9度
2月5日 平均気温−8.8度、最高気温−5.8度、最低気温−10.9度
函館気象台の記録なので、山では、約0.5度ほど低くなっています。

2010年2月6日撮影 函館市
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2010年2月7日 函館市
11時30分から15時30分まで、クモガタガガンボを探しに山に入りましたが、全く見当たりませんでした。
天気は晴れで、風が非常に強く約4メートルから9メートルほどありました。
気温は、約0.7度から1.7度ほどと前日から見ると、10度ほども高くなっていました。

2010年2月7日撮影 函館市
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2010年2月11日 函館市
クモガタガガンボのメス(小型)雪洞から出てきたクモガタガガンボ
@13時18分 小型メス 気温:−1.3度位

クモガタガガンボのオス(大型)クモガタガガンボのオス(大型)
A13時47分 大型オス 気温:−1.4度位  【動画参照】

本日は、最低気温が−10度近くまで下がりましたが、日中は、−1度位になりました。風も殆どなく、薄曇りです。
午前11時45分頃から探し始めましたが、なかなか見つかりません。
雪面は、昨日まで気温が上がったため表面が融けて再度凍っているので、乗って歩くことができます。

@の小型のメスは、積み上げられた雪山の雪洞から出てきたところです。
Aの大型のオスは、雑木林の脇の雪面をひたすら歩いていました。歩くスピードは、かなり早く、追うのが大変なくらいです。
午後3時頃まで探しましたが、追加個体はありませんでした。

2010年2月11日撮影 函館市
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2011年2月11日 函館市
クモガタガガンボの生息場所クモガタガガンボのオス
  @クモガタガガンボの生息場所           A13時10分 小型オス 気温:−1.0度位
クモガタガガンボのオスクモガタガガンボのメス
B13時10分 小型オス 気温:−1.0度位    C13時40分 小型メス 気温:−1.0度位

今年初めてのクモガタガガンボの発見です。 【動画参照
本日は、最低気温が−6度近くまで下がりましたが、日中は、−1度位になりました。風はなく晴れです。
午前11時30分頃から探し始めましたが、なかなか見つかりません。
雪面は、昨日の雪がさらっと乗っている状態です。雪の深さは昨年の2倍くらいあるようです。

@の小型のオスは、雑木林の斜面を降りてきているところでした。
Aの小型のメスは、杉林の脇の雪面の窪みに入っていました。
午後2時半頃まで探しましたが、追加個体はありませんでした。

2011年2月11日撮影 函館市
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 観察場所
ミズナラ・コナラ主体の雑木林
ミズナラ・コナラ主体の雑木林の斜面
湧き水の流れ(20センチ幅)
湧き水の流れ(20センチ幅)で、地面が見えている
小川のそば
小川の流れる場所で、雪が融けて地面が見えている場所
ススキ原の近く
ススキ原の近く
雪の洞
雪の洞など
笹と幼木の隙間
笹と樹木などの隙間
ミズナラ・コナラ主体の雑木林
ミズナラ・コナラ主体の雑木林そばの平地
.
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 クモガタガガンボの飼育記録   
2010年1月25日 2010年1月31日 2010年2月6日 2010年2月9日
2010年2月10日 2010年2月14日 2010年2月22日 .
2011年2月11日
2010年1月24日(日) 
2010年1月24日(日)に採集したクモガタガガンボを飼育ケースで飼うことにしました。
大型のオス1頭と小型のメス1頭からスタートです。
容器はミニケースにキッチンペーパーを敷いて水を多めに含ませ、山で採った枯葉を3枚とシンプルにしました。
保管場所は、北側の室内階段窓枠です。気温は約10度ほど。
2010年1月25日(月)
クモガタガガンボの飼育ケース
クモガタガガンボの飼育ケース
クモガタガガンボのメス(死亡)
死亡していたクモガタガガンボのメス
クモガタガガンボのオス(大型)
クモガタガガンボのオス(大型)
クモガタガガンボのオス(大型)
クモガタガガンボのオス(大型)
クモガタガガンボの飼育を開始して一日が経ちました。
保管温度は約10度と高めですが、オスは元気に歩きまわっています。
メスは、昨日の段階で弱っていたので、死亡していました。
オスは、死亡しているメスに交尾を行おうとしていました。 【動画参照】
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2010年1月31日(日)
クモガタガガンボのオス(大型)
クモガタガガンボのオス(大型)
交尾するオス
見づらいが、交尾をするところです
クモガタガガンボの飼育を開始して1週間が経ちました。
保管温度は約8度から10度と高めですが、オスは元気に歩きまわっています。
本日採集したメス(大型メス1頭・小型メス2頭)を3頭入れました。
オスは、すぐにメスに交尾を行おうとしていました。
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2010年2月6日(土)
死亡したメス2頭
死亡したメスが1頭
飼育ケースの様子
飼育ケースの様子
クモガタガガンボの飼育を開始して2週間が経ちました。
保管温度は寒波の影響で、約5度前後でした。2週間たってもオスは元気に歩きまわっています。
3頭のメス(大型メス1頭・小型メス2頭)のうち、小型メス1頭が死亡していました。
飼育ケースには、緑の葉(イボタノキ)と昆虫ゼリーを入れてみましたが、昆虫ゼリーを食べているところは確認出来ていません。
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2010年2月9日(火)  気温:約9度(PM11:00)
クモガタガガンボの卵?
クモガタガガンボの卵?
クモガタガガンボの卵?
クモガタガガンボの卵?
クモガタガガンボの飼育ケース内の枯葉の上に白い粒がありました。
拡大してみるとクモガタガガンボの卵のようです。
色は乳白色で、タマゴ型、0.5ミリ程の大きさです。
おそらく、下に轢いてあるキッチンペーパーにも産み付けられていると思われます。
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2010年2月10日(水) 気温:約8度(PM11:00)
クモガタガガンボの小型メスの死亡
クモガタガガンボのメス(小型)の死亡
ゼリーを食べるクモガタガガンボ
ゼリーを食べるクモガタガガンボ
1月31日に採集してきたクモガタガガンボのメス(小型)が死亡していました。
また、大型のメスは、昆虫ゼリーに食いついています。
大型のオスは、相変わらず元気に歩きまわっています。
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2010年2月14日(日) 気温:約9度(PM11:00)
クモガタガガンボのオス(大型)の死亡
クモガタガガンボのオス(大型)の死亡
クモガタガガンボのメス(大型)
クモガタガガンボのメス(大型)
1月24日に採集してきたクモガタガガンボのオス(大型)が死亡していました。約20日間生きていたことになります。(左)
また、1月31日に採集してきた大型のメスは、相変わらず元気に歩きまわっています。(右)
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2010年2月22日(月) 気温:約11度(PM11:00)
最後まで残っていたクモガタガガンボのメス(大型)が死亡していました。
1月31日の採集から約20日間生きていたことになります。
今後は、成虫がいなくなったので、卵の確認や幼虫の確認などを行っていくことになります。
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2011年2月11日(金) 温度:約8度(PM11:00)
飼育ケースの様子ツユクサの陰のメス
本日採集してきたオス1頭とメス1頭で2011年の飼育をスタートさせました。
飼育ケースには、キッチンペーパーを底に敷き、水分を多めに含ませました。
エサは不明なので(水しか飲まない?)、ナナフシに使っていたツユクサとツタ、ビワを入れておきました。
昨年は、産卵までしか観察できなかったので、産卵・孵化までは持って行きたいと思います。
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 参考文献
「Chionea」 Wikipedia ⇒ web
Catalogue of the Craneflies of the World ⇒ web ⇒  'chionea' で検索
Kansas School Naturalist ⇒ 「Snow Flies」(by John Richard Schrock)
「虫たちの越冬戦略」 朝比奈英三(1991) 北海道大学図書刊行会
雪上に棲むクモガタガガンボの観察」 安保 健治 (1952) 新昆虫5(2)
くもがたががんぼについて」 安保 健治 (1962) 砂川市郷土研究会誌
「極限環境と生物 -雪氷環境の好冷生物 幸島司郎(2000) Biological Sciences in Space 14(4)
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