ナナフシの森

-シラキトビナナフシの窓-

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シラキトビナナフシの観察 卵

シラキトビナナフシの卵について

 シラキトビナナフシは、単為生殖という、メスのみで卵を産むナナフシです。オスがいるのかどうかは良く分かっていないようです。

 8月頃に成虫になったシラキトビナナフシのメスは、ミズナラの葉や、周囲の下草の上から卵を産みながら下に落としていきます。野外で見た時には、葉っぱの上に糞とともに卵が残っていました。

 メスの産卵口は、尾の先端でなく、先端から2節位の下腹部の突起の所にあります。飼育下で見たところ、この産卵口から、卵がぽろっと出てきます。コオロギなどのような産卵管はありません。

産卵の様子は、こちらにあります。⇒ シラキトビナナフシの産卵

メスのシラキトビナナフシ
メスのシラキトビナナフシ
メスのシラキの産卵口
メスのシラキの産卵口
葉の上で産卵するシラキ
葉の上で産卵するシラキ

 産み落とされた卵は、2mm位の俵のような形をしています。表面にはメロンのような網目模様がついています。
 色は、様々あり、茶色・こげ茶色・黄土色・灰色などです。なぜ、様々な色の違いがあるのかは、よくわかりません。
 卵には、ふたのようなものがついていて、ここから孵化してくるのかもしれません。まだ、孵化させたことがないので仮定です。
 卵の底は、メロンやスイカなどの底と同じようになっています。
 卵の側面は、網目模様が1周しているのではなく、途中で豆のへそ?のようになっています。(豆のへそのようなもの)

シラキトビナナフシの卵
シラキトビナナフシの卵

飼育中のシラキトビナナフシの卵の数

 我家の飼育下のシラキトビナナフシ4頭は、2007年8月26日に飼育をスタートさせてから、9月22日までの間に、555個の卵を生みました。1頭当たり、平均で111個生んでいることになります。

 成虫になってから自然界ですでに卵を産み始めているはずですし、9月25日現在も卵を産み続けています。そのことを考えると、1頭当たり100個から150個位も卵を産むのかもしれません。

 シラキトビナナフシは、自分の身を守るために葉っぱに擬態することしかないようなので、自然界ではこれくらいの数を生まなければ、子孫を残し続けることが出来ないのかもしれません。

 これだけの数から、いくら孵化してくるのでしょうか?また、成虫にまでなって、卵を産み始めるのは、どれくらいの確率なのでしょうか?今後調べてみたいものです。


  飼育中のシラキトビナナフシの卵の数

  • 期間 : 卵の個数: 累計: 頭数: 備考
  • 2007.08.26~2007.09.01 : 117個: 117個: 4頭: -
  • 2007.09.02~2007.09.10 : 201個: 318個: 4頭: -
  • 2007.09.11~2007.09.22 : 237個: 555個: 4頭: 9.21に1頭☆
  • 2007.09.23~2007.10.02 : 077個: 632個: 3頭: 10.2に1頭☆
  • 2007.10.03~2007.10.12 : 137個: 769個: 2頭: -
  • 2007.10.13~2007.10.21 : 093個: 862個: 2頭: -
  • 2007.10.22~2007.10.30 : 068個: 930個: 2頭: 10.19に1頭☆
  • 2007.10.31~2007.11.15 : 055個: 985個: 1頭: 11.15に1頭☆

(2007年9月24日 記載)

シラキトビナナフシ1頭あたりの1日の卵の個数

 2007年10月3日に、前日からの卵の産卵数を数えたところ、2頭で12個でした。1頭当たり6個になり、24時間たっているので、約4時間に1個の割合になります。 ためしに、今までの卵の数を調べてみると次のようになります。(頭数に*が付いているのは途中で☆になった個体あり)


  1頭あたりの1日の個数

  • 期間 : 卵の個数: 1頭あたりの1日の個数: 頭数: 備考
  • 2007.08.26~2007.09.01 : 117個: 4.2個: 4頭: -
  • 2007.09.02~2007.09.10 : 201個: 5.6個: 4頭: -
  • 2007.09.11~2007.09.22 : 237個: 4.9個: 4頭: 9.21に1頭☆
  • 2007.09.23~2007.10.02 : 077個: 2,6個: 3頭: 10.2に1頭☆
  • 2007.10.03~2007.10.12 : 137個: 6.8個: 2頭: -
  • 2007.10.13~2007.10.21 : 093個: 5.2個: 2頭: -
  • 2007.10.22~2007.10.30 : 068個: 2.7個: 2頭: 10.19に1頭☆
  • 2007.10.31~2007.11.15 : 055個: 3.4個: 1頭: 11.15に1頭☆
シラキトビナナフシの卵

 我家の4頭は、採集したときはすでに成虫でしたので、すぐに卵を産み始めました。おそらく8月の中旬から下旬にかけて、成虫になったと思います。あくまでも計算上のことなので正確なことはわかりませんし、個体によっても違いがあると思いますが、おおよそ1日に5個前後卵を産んでいるようです。

 単純に計算して、1ヵ月で150個前後になります。自然界でどれくらいの個体が生息しているのか分かりませんが、みんながこれくらい産むとしたら、卵の数は膨大な数になると思います。
 来年は、幼虫から飼育して、成虫の産卵数をもう少し詳しく調べてみたいと思います。

(2007年10月5日 追記)


 2007年11月15日に、最後の1頭のシラキトビナナフシが☆になってしまいました。11月13日には元気に歩き回っていましたし、卵も産んでいました。今年の卵は、4頭全ての分で985個回収することができました。
来年、うまく孵化することができるかどうか心配ですが、何とか管理していきたいと思っています。

(2007年11月16日 追記)

シラキトビナナフシの卵の保管

シラキトビナナフシの卵はどう保管するのか?

ココに書かれている方法は、残念ながら孵化に失敗した場合です。(2009年4月4日 追記)
こちらに、孵化に成功した場合を載せてあります。 ⇒ シラキトビナナフシの孵化に成功 

 シラキトビナナフシの卵は、自然界では、地表に産み落とされます。落ちた卵は、雨に降られたり、流されたり、時には日光に照らされたり、枯れ葉に埋もれたりして、冬を迎えます。冬になると霜が降りたり、雪が降ったり、数十センチの雪に埋もれたりします。また、春になると雪解け水にさらされたりします。このような自然環境の中でも、毎年、毎年、孵化してきて、世代を重ね続けていると思います。

 さらに、自然環境の影響だけでなく、カビや細菌などの影響も考えられます。卵は、意外と丈夫にできているのかもわかりません。(函館の気候)

 家で、産卵された卵は、どのように保管するとよいのか、初めての飼育なのでよく分かりません。また、500個という大量の卵を、無事に孵化までもっていくにはどうしたらいいのか考えてみました。

失敗した保管方法

失敗した保管方法

 プラスチックケースにキッチンペーパーを敷いて、霧吹きで水をかけて十分湿らせ、その上にプラスチックの板を敷き、その上に、キッチンペーパーで作った箱の中に卵を入れてみました。

 この方法は、卵を入れているキッチンペーパーがケース内の湿気を吸って、湿りすぎになってしまいます。また、1週間もたつと今度は水分が飛んでしまい、からっからに乾燥してしまいました。

 水分を補給すると、湿りすぎになり、また乾燥しての繰り返しになってしまいます。最後は、キッチンペーパーに卵がくっついてしまいました。

 結果として失敗です。

現在の保管方法 ⇒ この方法も孵化に失敗しました。(2009年4月4日追記)

失敗した保管方法

 ハムスター用の消毒済みの砂浴びのすなを、クワガタ飼育用のケースに敷き、霧吹きで十分に水分を含ませます。その上に、プリンカップ(クワガタ飼育で使うもの)の蓋を置き、プリンカップの蓋に乾いたままの砂を少しだけ敷いて、その上に卵をまいていきました。卵が、数個ほどなら、キャップなどで十分と思います。

 今のところ、ほどよい湿り具合を保っているようで、卵をのせている蓋の砂は乾いたままになっています。この後、どのように保管していくのかは、初めての経験なので、やってみないとわかりません。

 考えられることとしては、保管温度が高いと冬の間に孵化してしまう可能性があります。孵化するのはうれしいのですが、幼虫のエサが手に入らないと思います。ミズナラの葉などは、完全に枯れていて手にはいりません。
 一応、ミズナラの林の中に生えていた、ミズナラの幼木を持ってきて、準備していますが、これもいつまでもつのかは不明です。何か、代用になるエサが見つかるといいのですが。(2007年11月追記:ミズナラの幼木は、紅葉して枯れてしまいました)

 自然界では、低温や積雪などの環境の中で卵が生き延びているのですから、玄関や物置などで保管しても大丈夫なのかもしれません。しかし、乾燥のし過ぎは、まずいのではないかと思います。積雪下の状態や、春先の状態を考えると、湿った状態の方が多いと思います。クワガタ飼育でも、乾燥のし過ぎは死んでしまうことが多いです。

 500個以上の卵があるので、いろいろ試してみたいと思います。

(2007年9月26日 追記)


 上記のクワガタ飼育用ケースは、水分の蒸発が早くすぐに乾燥してしまいました。水分補給を頻繁に行わなければなりませんでした。 そこで、それ以降の卵の保管は、密閉式の容器に5ミリ位の小さな穴を3個開け、そこをタイベスト紙でふさいだものを使って見ました。タイベスト紙は、空気は通すが水分は通さないため、容器内の水分状況は安定していました。

卵の保管ケース1
卵の保管ケース1
卵の保管ケース2
卵の保管ケース2

(2008年3月29日 追記)


これらの方法は、結果として孵化に失敗しました。

 キッチンペーパーの場合も、砂の場合も、越冬中に中が乾燥してしまい孵化につながりませんでした。 容器の問題もあるようですが、保水性に大きな問題があるようで、冬の間の乾燥に耐えられなかったようです。 こまめに水分補給することで乾燥を回避できたかも知れませんが、これらの方法はお勧めできません。


 

こちらに、孵化に成功した方法を載せてあります。シラキトビナナフシの孵化に挑戦するときの参考にして下さい。
シラキトビナナフシの孵化に成功

(2009年4月4日 追記)


参考資料

野外でのエサの状況(2009年現在)

函館市 コナラ
函館市 コナラ
函館市 ミズナラ
函館市 ミズナラ
函館市 クリ
函館市 クリ
石川県 ブナ
石川県 ブナ
大阪府 コナラ
大阪府 コナラ
コナラ・ミズナラ・ブナ・クリなどのブナ科の葉は、シラキトビナナフシのエサになります。
函館市 キイチゴ類
函館市 キイチゴ類
函館市 ノイバラ
函館市 ノイバラ
キイチゴ類とノイバラは、アマミナナフシなどのエサになります。

 2009年4月18日現在
北海道の函館市では、冬芽がやや膨らんできたばかりですが、本州の愛知県や大阪府のものは、すでに葉が開いています。

 2009年4月24日現在
函館市のコナラ・ミズナラは芽が膨らんできたばかりです。まだまだ葉が開く気配はありません。

 2009年4月29日現在
函館市のコナラ・ミズナラは、ようやく芽が膨らんできました。場所によって膨らみ方が違っています。25日と26日の雪の影響で少し遅れたかも知れません。あと1週間ほどで開葉すると思われます。

函館市 コナラ
コナラの芽
函館市 ミズナラ
ミズナラの芽
函館市 ミズナラ
膨らみ始めたミズナラの芽
函館市 ミズナラの林
函館市 ミズナラの林

 2009年5月3日現在
函館市のミズナラは、芽が伸びて葉を展開する直前になってきました。場所によっては葉が開いている木も見られました。ほぼ2・3日で葉が展開すると思われます。コナラの方はやや遅いようです。クリは、もう少しかかりそうです。
  ようやく、シラキトビナナフシのエサに出来るようになりました。 

函館市 コナラ
コナラの芽
函館市 ミズナラ
ミズナラの芽
函館市 ミズナラ
ミズナラの若葉
ミズナラの芽と初令
ミズナラの芽とシラキトビナナフシ

 参考 : キイチゴとノイバラは、葉が開きだし、アマミナナフシのエサとなっています。

 2009年5月5日現在
函館市のミズナラは、葉が展開し始めました。芽が伸び始めてからはものすごい速さで葉が開いていきます。
  シラキトビナナフシのエサが確保できるようになりました。

ミズナラの低木
開葉したミズナラ
ミズナラの幼木
ミズナラの幼木
ミズナラの高木
ミズナラの開葉
ミズナラの林
ミズナラの芽吹き

 2009年5月9日現在
函館市のミズナラ・コナラ・クリは、葉が完全に開き始めました。場所によっては、きれいに開ききった葉をつけているものもあります。
  シラキトビナナフシのエサの心配は無くなりました。

コナラの新葉
コナラの新葉
ミズナラの新葉
ミズナラの新葉
クリの新葉
クリの新葉
ミズナラの林
ミズナラの林

2010年春のエサの状況

 2010年5月1日現在
函館市のコナラ・ミズナラは、芽がわずかに膨らんできたばかりです。昨年よりも積雪が多かったことと2月~4月の低温の影響のために、昨年と比べて10日ほど遅れているような気がします。 ミズナラ・コナラは、シラキトビナナフシの一番のエサなので開葉が遅れると飼育中の初令幼虫にとって致命的になります。
  ケヤマハンノキとシラカンバは、シラキトビナナフシの代用食となるので、葉が開き始めたのは助かります。

ミズナラの芽
ミズナラの芽
コナラの芽
コナラの芽
ケヤマハンノキの芽
ケヤマハンノキの芽
シラカンバの芽
シラカンバの芽
キイチゴの芽
キイチゴの芽
イボタノキの芽
イボタノキの芽

 2010年5月16日現在
函館市のミズナラは、やっと葉が開き始めたところです。コナラ・クリは芽が膨らみ始めたところです。芽の開き方を比べると、今日の状態は、昨年の5月5日頃の状態です。 昨年よりも10日ほど開葉が遅れています。

ミズナラの芽
ミズナラの芽
ミズナラの芽
ミズナラの芽
コナラの芽
コナラの芽
クリの芽
クリの芽
キイチゴの芽
キイチゴの芽
ケヤマハンノキの芽
ケヤマハンノキの芽

函館の気候

(シラキトビナナフシのいるミズナラの林は、気象台より高い丘陵地にあります。)

降水量㎜ 平均気温℃ 最高気温℃ 最低気温℃ 平均湿度% 積雪計cm
2006.7 62.0㎜ 18.9℃ 26.4℃ 14.0℃ 80% -cm
2006.8 23.5㎜ 23.7℃ 31.7℃ 16.0℃ 78% -cm
2006.9 86.5㎜ 18.5℃ 26.9℃ 8.9℃ 72% -cm
2006.10 86.5㎜ 12.6℃ 22.7℃ 0.8℃ 71% -cm
2006.11 192.0㎜ 7.0℃ 19.1℃ -2.3℃ 71% -cm
2006.12 81.0㎜ 0.6℃ 9.6℃ -6.5℃ 69% 52cm
2007.1 100.5㎜ -0.4℃ 8.6℃ -7.3℃ 70% 75cm
2007.2 59.5㎜ 0.4℃ 10.1℃ -8.5℃ 65% 30cm
2007.3 73.0㎜ 1.5℃ 10.3℃ -7.6℃ 67% 67cm
2007.4 58.0㎜ 6.6℃ 16.1℃ -1.7℃ 67% -cm
2007.5 113.5㎜ 12.4℃ 22.6℃ 4.7℃ 71% -cm
2007.6 78.0㎜ 18.2℃ 27.6℃ 8.9℃ 75% -cm

函館海洋気象台ホームページより)

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